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040 四国まんなか千年ものがたり

心潤す列車旅への期待感、web上の「ものがたり」

四国まんなか千年ものがたり

1. 四国まんなか千年ものがたり Web サイトの概要

「四国まんなか千年ものがたり」の公式ウェブサイトは、四国の中央を走る観光列車の魅力や体験価値を丁寧に伝えています。

抒情的な画像に溢れ、サービス情報は画像付きで詳細、期待が膨らむばかりです。サイトの隅々から期待を高める効果が感じられ、車内の上質な空間での贅沢な時間を仮想体験させてくれています。

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2. ターゲット

  • 40代以降のゆったりとした旅を好む大人。
  • 特に鉄道旅・地域文化・美食に関心を持つ層。
  • カップルや夫婦、女性の一人旅・友人旅。

総じて「上質な時間」を求める旅行者が主なターゲットと言えるでしょう。

 

3. トップページの印象

「四国まんなか千年ものがたり」サイトのトップページには、様々な情報が紹介されており、この列車旅に関しての情報のダイジェスト版のような印象です。情報量は多いですが、ブロックに整理されコンパクトまとめられているので、すっきりした読みやすいページです。

12 枚のスライドによる「ものがたり」

ファーストビューは、スクリーン全体を使ったビジュアルが、フェード効果でゆったりと切り替わっていきます。その数12枚。

瀬戸内の風光明媚な景色や彩りも鮮やかな料理、上質な車内のしつらえといった情景写真で、この列車の乗車中に味わえる贅沢な時間を視覚的に体験できます。

画面中央に表示される文字は、画と合った文章で、一つ一つは短いキャプションです。ですが、12枚のスライドビジュアル全体で一つの「ものがたり」となっている仕掛けがあり、物語性を打ち出すブランドコンセプトを大変よく表現しています。

画像と「ものがたり」、2つの相乗効果で、ショートムービーを見るような没入感が得られました。

上質感はありますが重々しさはなく、清浄でさわやかな空気を感じ、「日常の煩雑さから解放された世界へようこそ」と告げるような導入です。

 

4. web サイト全体の特徴

「四国まんなか千年ものがたり」サイト全体を見て私が抱いた印象は、「テーマを絞った旅行パンフレット」のよう、というものでした。

構成はもちろんデザインも、鉄道会社や旅行会社が、生活にゆとりのある層(主として中高年)向けに揃えるような小冊子=紙媒体をウェブ上に再現しているようです。とはいえ、ウェブならではの利点を加え、更に完成されたものへと発展しているように感じました。

1 サイトのコンセプト・構成

「四国まんなか千年ものがたり」ウェブサイトの構成・演出からは「体験の質を最大化する」ことに重きを置いたブランディング戦略が読み取れます。

1 上質感のあるビジュアル
  • 高級感のある写真(車内のしつらえ・料理・車窓の景観)
  • 落ち着いた色味や洗練されたレイアウト
2 「非日常」や「特別感」を演出する言葉選び
  • 「特別なひととき」「おとなの遊山箱」「一期一会のご縁」
  • 「清らか」「千年の歴史」「和の風情」「凛とした」といったキーワード
3 宿・食・移動の“質”の訴求
  • インテリアは古民家をモチーフにした、木に包まれた空間
  • 地元食材を使ったお食事や物語性のあるメニュー
  • 車両ごとにコンセプトある空間での移動
4 ゆとりある旅
  • 移動自体が観光であり、食堂であり、目的でもある旅
5 パーソナル対応や特典の紹介
  • 車内サービスの充実:観光ガイド、アテンダント、高齢者向け・お子様向けサービス
  • 専用待合室でウェルカムドリンク、駅員・地元住民の出迎え等の歓迎
6 文化・体験の深さ
  • 車内に伝統工芸品を展示、人間国宝の香川漆器を使用
  • 列車のスイッチバックを体験、国指定天然記念物、地元の方々との交流タイム
7 信頼・安心感を与える情報
  • 清潔な空間、メンテナンス
  • よくあるご質問、切符購入方法やアクセスのわかりやすい情報
8 ターゲット像に寄り添う語り口
  • 丁寧で落ち着いた口調ながら、旅の開放感を表すような親しみやすい語りかけ方。
  • 旅のストーリー性や感性に訴える構成を意識
9 限定性の強調
  • 1日1往復のみ、主に週末のみの限られた運転日

2 サイトのデザイン ー 平面構成

トップページファーストビュー以外は、特にアニメーションなどの演出を加えることなく、平面的な構成です。

目を引くトップビジュアルにリード文、画像と説明文がセットになったブロック配置‥‥雑誌やパンフレットの構成です。
構造自体はシンプルでトラディショナルですが、このサイトのコンセプトにはよく合っており、安定性と信頼性の表現になっていると思います。

サイトで調べるというよりは「読ませる」意識でのデザインであると感じます。

もちろん紙媒体にない優位性として、ページのリンク導線、PDFでの追加情報、Googleマップ埋め込みによる利便性などさまざまなものがありますが、なによりも、運行日・空席情報のリアルタイム確認が可能なことでしょう。(site)

3 配色 ー 3 色構成

「四国まんなか千年ものがたり」サイトは、全体的に上品な配色と余白を生かしたレイアウトが特徴的で、ゆったりと落ち着いた印象を与えます。

ベースは、アクセントカラーは落ち着いた、これに金に近い黄色を加えた3色を基本にしています。

余白を多く取っているので、情報量や文字量が多くても詰め込み感はありません。

よく見る中高年向けパンフレットでは、地色も濃い色を使用したり、金色を分量多く使用していたりしますが、このサイトでは白の分量を多く、青は落ち着きながらも若々しい色味で、金色はノーブルな雰囲気を加えつつ控えめに、といった印象を受けました。これは、ターゲットに20代後半からの少人数旅行をも含めている為ではないでしょうか。

また、重々しい感じを避けることで、旅の開放感を印象づけてくれるような気がします。

4 ”ものがたり”

サイト内の文章は「ものがたり」の雰囲気を持たせたリラックスするような表現で、ビジュアルも相まって、旅そのものが一つの物語であることを感じさせる構成です。

 

5. コンセプトページについて

「四国まんなか千年ものがたり」ウェブサイト「コンセプト」のページでは、列車名の“千年ものがたり”という言葉につながるコンセプトを伝えています。ここでは古民家をモチーフにした車内・座席の紹介を中心に、古来から徳島に伝わる「遊山」という風習について語られています。

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6. 旅のご案内ページについて

旅のご案内」では、運行区間やスケジュール、停車駅の紹介など、実用情報が分かりやすくまとめられています。イラストマップや駅ごとの写真も挿入されており、ルート全体の風景や見どころが直感的に把握できる工夫もあります。

特にこの列車の醍醐味の一つである、「お食事」については、画像を大きく使い、こだわりの説明も画像付きで詳細。これが『一推し』と力の入っていることが伝わります。

 

7. 楽しみ方ページについて

楽しみ方」では、一人旅から仲間、記念日旅行など、シチュエーションに合わせた楽しみ方の提案がされています。

座席から見える景色、食事、駅での特別な体験やおみやげなどが紹介され、乗車時間そのものをどう味わうかが丁寧に説明されています。
味覚・触覚・視覚や空気感を伝える写真も多く、五感で味わう列車旅というテーマが目から伝わってきます。食や自然、地元とのふれあいを具体的にイメージできるので、旅行の期待感をぐっと高めてくれます。

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8. おもてなしページについて

おもてなし」のページでは、地域住民との交流や、列車スタッフやメンテナンスといった、快適な旅を支えるスタッフにも焦点が当てられています。
笑顔の写真と共に、それぞれの役割や思いが語られており、列車というハード面だけでなく、そこに宿る「人の心」を感じられる内容です。顔が見える安心感と、地域とともに作り上げる旅という信頼性が丁寧に伝えられています。

また、観光ガイドや高齢者・お子様向けサービスなど、快適な旅をサポートするサービスの充実さもしっかりと伝えています。

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9. おとなの遊山箱

「四国まんなか千年ものがたり」サイトでは、「遊山箱」についてこのように説明されています。

「その昔、徳島の人々は桃の節句になると、お弁当を持って近くの山や浜へ出かけて1日を過ごす「遊山」を楽しんでいました。」「四国の歴史を感じたい、のんびりと四国で過ごしたい、日常とは離れて非日常を味わいたい….そんなあなたに『おとなの遊山』をおすすめします。」(site)

そして、この列車の特別料理として遊山箱でのお食事を提供しています。

「『おとなの遊山箱』は、その昔徳島の子どもたちが野や山に遊びに行く際、お弁当を詰めて持って行った三段の重箱(遊山箱)を千年ものがたりオリジナル版として製作。」(site)

私事ですが、昔友人がふと漏らした言葉で、私は初めて「遊山箱」という言葉と風習を知りました。四国出身の友人は、それがごく一部の地域に伝わる特別なものだという認識はなかったようです。子供が持つには上質で特別な重箱に入ったお弁当を抱え、山に遊びに行くというなんとも雅な行事に、私は大変な憧れを抱きました。春に桜の咲く山で食べる豪華なお弁当、それも代々受け継がれた素敵な装飾に彩られた三段重。思い浮かべるだけで、一生の素敵な思い出になるような幸せな光景です。

私はすでに大人で、四国に縁もなく、そのような経験をすることはできませんが、いつかこの列車で提供される「おとなの遊山箱」を、車窓の素敵な景色を眺めながらいただけたらと希望が膨らんでいます。

 

10. ユーザーインターフェース

「四国まんなか千年ものがたり」サイトのユーザーインターフェースは、シンプルで分かりやすく、移動に迷うことはありません。

ナビゲーションメニューはページ上部に常時表示される固定型で、スクロールしてもすぐアクセス可能です。内容も整理されており明確ですが、タイトルを見て目的のページに移動するというより、メニューをインデックスとして、順番に「読んでいく」といった閲覧のほうがしっくりくるサイトだと感じます。

レスポンシブ対応によりスマートフォンでの表示も最適化されており、快適な閲覧環境です。

英語版のページも用意され、必要な情報が1ページにシンプルにまとめられています。

Facebook公式へのリンクもありますが、SNSとの連携は控えめな印象です。席数が少なく、運行日も限られる「限定」旅がアピールポイントでもありますから、幅広い広報は不向きとも考えられます。また、情報発信をこの公式サイトに集中させて、世界観が曖昧になるのを防ぐ目的もあるのかもしれません。

残念な点としては、せっかくウェブという媒体でありながら、オンライン予約に対応していないため、購買導線とはなっていない事があげられます。ただ、「特別な体験」の為に手間をかけるというのも、大切な事なのかもしれません。

 


まとめ

「四国まんなか千年ものがたり」のウェブサイトは、ただの観光列車紹介にとどまらず、列車に乗ること自体が一つの「物語」であるというコンセプトを視覚・文章・構造のすべてで表現しています。

土地の歴史と地元の人々の温かさにも言及することで、「伝統や風土への敬意」を元にしたこの列車のコンセプトが伝わり、全体が「ものがたり」性を持ったサイトだという印象です。

派手な演出はありませんが、美しいビジュアルには人を惹きつける力があり、紙面のような安定したデザインと色を絞った設計からは、上質な空間で味わう旅の価値が自然と伝わってきます。

静けさと品格を感じる、まさに「特別な時間」への入り口となるサイトといえるでしょう。

いつか私もこの列車で、「おとなの遊山」体験をしたいものです。

 

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