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094 九州宇宙ビジネスキャラバン2025

宇宙へ挑む力強さを演出する、象徴的なイラスト群

九州宇宙ビジネスキャラバン2025

1. 九州宇宙ビジネスキャラバン2025 webサイトの概要

「九州宇宙ビジネスキャラバン2025」(Q-SPACE BUSINESS CARAVAN 2025、略称 QSBC)は、2025年10月16日に鹿児島県鹿児島市で開催される宇宙ビジネス関連のフォーラム・交流イベントを中心とした事業です。

QSBCの公式ウェブサイトは、「宇宙を、稼ぐ力に変える」というキャッチコピーを示し、「鹿児島」「薩摩の気風」「元祖宇宙港」など地元性と歴史性を織り交ぜた文言で、地域と宇宙ビジネスの接点を意識づけています。

主催者・後援組織も明記されており、鹿児島県、一般社団法人九州みらい共創が主催。後援には内閣府宇宙開発戦略推進事務局、JAXA、鹿児島県市長会・町村会、公益社団法人日本青年会議所九州地区鹿児島ブロックなどが名を連ねています。

イベントの告知広報サイトとして、また、来訪者にとって必要な情報を提供する場としても機能しています。

 

2. サイトのターゲット

  • 宇宙・航空分野に関心をもつ企業、特にベンチャーやスタートアップ
  • 地方自治体、地域振興担当者(宇宙を地方創生に組み込みたい層)
  • 研究者・大学関係者、宇宙技術やデータ利用に興味をもつ人々
  • 投資家、資金提供者、金融機関
  • 宇宙を題材にしたビジネス企画やプロジェクトを模索している個人
  • 一般社会人・学生で、宇宙ビジネスの領域に興味がある潜在層

 

3. スプラッシュページからファーストビューへ

QSBCのウェブサイトを訪れるとまず、スプラッシュページから続くファーストビューに迎えられます。

スプラッシュページ

白い画面に6角形が9個現れ、ハテナ(?)マークに似た形を作っていきます。それぞれに、水色、青、緑、と上から色がついていき、タイトルが現れたところで、最後の紫色2つのみを残して、他が枠線のみに戻ります。

さてこの形、「九州」名称の由来となった9つの国を表し、2つの紫色のブロックは、鹿児島県として統合された「大隅国」「薩摩国」を表しているのでしょう。
主催団体の1つである「一般社団法人九州みらい共創」のロゴマークに倣っているようですが、九州を、鹿児島を、こういった「形」で象徴するのは、ユニークな表現だと感じました。

ファーストビュー

スプラッシュページのタイトル、ロゴマークに、なんとも不思議な造形が加わってファーストビジュアルが形作られます。

オレンジ、緑、茶色などの色がついた、カクカク不定形の図形の集まり
何かを象徴しているはずだけど、何なのか。‥会場施設の形かな?でも右上に伸びてる図形は不自然なような‥しばらく考えて「桜島だ!」と気づきました。そう思ってみれば、鹿児島県のシンボルとも言われる桜島が噴煙をあげている姿にしか見えないのですが、「気になる→考える→考える→気づく!」の「アハ体験」です。
サイト分析ブログも今回で94回目。分析の過程で何度も経験してきた「アハ体験」ですが、今回もささやかな喜びを噛み締めることができました。

 

4. Webサイトの特徴

QSBCウェブサイトは、1ページ・ロングスクロールのランディングページ構成です。

デザインとしての文字

フォント:本文=ゴシック体。タイトル文字=極太ゴシックの特徴的なフォントを画像配置。
文字カラー:

サイト内で写真の使用が小さく限定的な中、文字に使われている「黒」が単なる文字色ではなく、このサイトのデザインの一つとして主張を持って存在しています。

特にタイトル文字のフォントは非常にボリュームのあるフォントで、背景に置かれたイラストに負けることなく、サイトデザインの支柱として存在している印象です。カジュアルさもありますが、何よりも「力強さ」を感じます。

サイトの色彩と背景イラスト

背景色:極薄いグレーにカラフルなイラスト
メインカラー:。見出しやテキストは黒(#000)で書かれています。
アクセントカラー:紫色。登壇者の写真は紫の色調で統一されて、アイコン的に使用されています。

背景には大きなイラストビジュアルが複数存在しています。ファーストビューの桜島と同じテイストで、カクカクと丸みの一切ない多角形で構成されています。何も考えずに眺めても、「秘めた力」「湧き上がる情熱」「自然との共存」「切り開く意思」などがイメージできるようなイラストです。

ですが、おそらく一つ一つが意味を持ち、冒頭メッセージの「宇宙を、稼ぐ力に変える」「鹿児島の『宝』」などのキャッチと重なり、視覚的にイベントのテーマと地域性を直感的に伝えているに違いありません。
ここでも「謎解き」に取り組むことになりました。

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中央の大きな木は、おそらく鹿児島に限らず日本の宝である「屋久杉」でしょう。
青の中の三角形は、海に浮かぶ鹿児島県の数々の島を表しているのではないでしょうか。
鹿児島には有名な温泉地もあります。一番下の赤く細長い形状のものは地中のマグマで、その上のオレンジ色の線状アイテムは、緩やかに弧を描いて立ち上る温泉の湯気を表していると判断してみました。

一番悩んだのが上の方にある、オレンジ色の長い形と、それとセットになっているかのようなカクカクした半月状のアイテム。オレンジ色のアイテムはその形から、ロケット発射場のある「種子島」でしょうか。すると半月状のものは ー 色合いが桜島の噴煙と同じです ー ロケット発射時に発生する水蒸気ではないでしょうか。煙の尖った先が「発射場はココ」と指し示しているかのようです。

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私の想像は間違っているかもしれませんが、「何か意味がありそう」な雰囲気を持ちつつ、「意味があるなしに関わらず力を感じる」そんなイラスト群です。

スクロール中の動き

長い長いサイトをスクロールしていくと、テキストや講演者の写真、スポンサーアイコンなどが下からすっと上がってきて表示されます。
ウェブサイトではよく見る演出ですが、このサイトの構造や、特に背景イラストの縦方向へ伸び上がる配置と重なって、温泉が湧き上がるような、アイデアが湧き上がるような、新たな人材が名乗りを上げ加わるような、そんな印象を残しました。

地域性と宇宙を結びつけるストーリー

冒頭メッセージの語り口

冒頭メッセージで「薩摩」「鹿児島」「宇宙港」「鉄砲伝来」「明治維新」など地域の歴史と結びつけた単語を使うことで、「宇宙が遠くの世界ではなく、この土地にも根づき、歴史を作っている」というストーリーが見えてきます。

特に印象的なのは、その語り口です。多数の企業や公共機関が関わるイベントです、一般的には無難に丁寧な言葉遣いで綴られるでしょう。
それがここでは、「2025年、舞台は鹿児島。」で始まります。言われる通り、舞台台本の序文のような印象の幕開けです。
続く文章も「時代を切り拓いてきた薩摩。」「スピーカーたちが集結。」「若き挑戦者が参戦。」などと体言止めの連続で、そこからは意志の強さと力強さを感じます。
締めは「薩摩の魂が燃え上がる、鹿児島で会おう。」‥何となく維新の志士たちを思い起こします。

私たちが「歴史の中の鹿児島」に抱く印象が強く意識されたメッセージだと感じました。

元祖宇宙港・鹿児島

また、種子島・内之浦という宇宙的に意義のあるロケーションを視察ツアーで扱うことで、単なるフォーラムイベントではなく「現場を訪れ、体感する」機会を持たせています。

新しい宇宙ビジネスを考える上で、現場感のある鹿児島という地が相応しいと感じさせる取り組みではないでしょうか。

信頼性:公的機関の存在

後援機関として内閣府やJAXAが名を連ねることをサイト上で明示しており、イベントの信頼性・価値を担保しています。

また、登壇者に政府・自治体・企業・研究者をバランスよく揃える構成が感じられ、単なる講演会ではなく「ビジネス/政策/技術」の融合を目指すフォーラムだと印象づけています。

 

5. ユーザーインターフェース

QSBCWebサイトは、デザインによるアピールに注力している印象で、その受け止め方によって、サイトの快適性に関する印象が変わりそうです。

ロングスクロール

ページ内にはナビゲーション機能がなく、ユーザーはスクロールによってセクションを移動していく形です。(トップへ戻るボタンもありません)

例えば、特定のフォーラムの情報を知りたくて訪問したユーザーは、長いスクロールの中で、目的の情報を見つけなくてはならず、不便さを感じるかもしれません。

ただ、上でも述べたように、デザインが意味を持つサイトですから、「上から順番にサイト内を閲覧していく」ことこそが、ここでの「サイト内体験」とも言え、利便性だけが全てではない気がします。

情報の可視性と区分け

各セクションには見出しや小見出しが整備されており、情報が塊で押し込まれることなく、適度に改行や余白を使って読みやすく整理されています。

見出しは太いフォントで表示され、視認性と共に「力強さ」を演出するデザイン上のキーアイテムともなっています。

その一方、背景イラストの主張が強く、情報テキストや登壇者写真などは、視認性が良いとは言えず埋もれがちです。
大きなコンテンツは見出しの存在感によって区切りが感じられますが、例えばタイムテーブルなどは、各時間の区分も曖昧です。また、イラストの区切りと本文の区切りが一致しないので、どうしてもイラストの印象に引きずられてしまいます。

こちらもまた、デザイン性と可視性との兼ね合いの難しさを見せています。

レスポンシブ対応

ロングスクロールサイトなので、むしろスマートフォンなど、モバイルでの閲覧に向いています
横幅が狭い分、目が泳がず、文字の可読性もPCに比べると上がっているように感じます。

 


まとめ

「九州宇宙ビジネスキャラバン(QSBC)2025」のウェブサイトは、宇宙ビジネスという専門性の高いテーマを扱いつつ、「鹿児島」という地域性を前面に打ち出し、デザインとストーリーで「見せる」サイトであり、インパクトがあります。

カクカクとした直線で描かれるイラストは、色彩豊かで意味深で、視覚も(謎解きという)興味も引き付ける効果を持っています。
その中、黒い極太字の見出しフォントは負けない力強さで画面を引き締めています。

鹿児島を象徴するようなイラスト群、冒頭の口調、ツアー企画といったフォーラムの内容などが、ここ鹿児島での開催を強く印象付けています。

告知サイトとしてはアピール力、インパクトに優れているサイトと思います。一方、フォーラムイベントの案内サイトとしては、情報の視認性に問題があると言えるかもしれません。

私としては、宇宙というフロンティアに臨むのに必要な力強さと勢い、それを体現しているようなデザイン性の方を支持したい気持ちの方が強く残りました。

 

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