遠く頭上を周る人工衛星に親近感と共感を
サテナビ
1 サテナビwebサイト概要
「サテナビ(サテライトナビゲーター)」は、人工衛星の開発・運用を担うJAXA第一宇宙技術部門が運営するウェブサイトです。
私たちの暮らしを支える観測衛星のリアルタイム位置や画像、プロジェクト紹介、最新ニュースなど、人工衛星に関する情報の公開と理解促進を図っています。
2 サテナビのターゲット層
サテナビは、専門的な研究者向けというよりも、宇宙や地球観測に興味のある一般の方を主な対象としている印象です。
Earth Watch や「もっと人工衛星を学ぼう」「人工衛星の“ミリョク”に迫る」など、子供から大人まで年齢を問わず、興味を引き起こすコンテンツが豊富です。
ここで興味を持った人が、将来人工衛星に関わる仕事へと進むことへの期待が込められているのも感じられます。
- 研究者・データ利用者へ:「共同研究者募集」「データ利用のご相談」などのナビゲーションにより、「Earth-graphy 地球観測衛星データサイトhttps://earth.jaxa.jp/ja/earthview/」への導線が設けられています。
- メディア関係者や教育方面へ: 目的別に的確なページ・サイトへの導線が設けられています。
3 ユーザーインターフェース
サイトは、多くの情報を扱いながらも、見やすさと使いやすさに配慮した設計であると感じます。
ナビゲーション
トップに固定され、ホバーで大きくドロップダウン展開されるメニュー構成(ホーム/サテライト・カフェ/ニュース/人工衛星プロジェクト…など)が、直感的に各カテゴリへ誘導してくれます。
常に表示されるナビゲーションにイラストアイコンが添えられていることにより、サイトに楽しい雰囲気が保たれているように感じます。
レスポンシブ対応
スマートフォンでも快適な閲覧環境が保たれています。
SNSとの連携
Xや YouTube へのリンクが目立つ場所に設置されており、公式アカウントへの誘導が図られています。
多言語対応
ページの上部右に“English”メニューがあり、英語ページへの切替が可能です。
4 トップページの印象
サテナビのトップは、「今日も、はたらく人工衛星」のキャッチが前面に大きく表示された、複数のビジュアルによるフェード効果のスライドから始まります。
サブキャッチはビジュアルに合わせて変り、「災害に対応」「暮らしを豊かに」「科学研究」「気候変動を知る」「技術」など、人工衛星には様々な役割があることが示されています。
トップページでは、コンテンツの紹介とリンク、このサイトについて、そして研究者やデータ目的の訪問者を目的サイトに誘導する役割を果たしています。
「科学」という少し難しさを感じる分野の紹介を、柔らかいタッチのイラストを使用したり、ブロックコンテンツには大きく丸みを持たせるなど、印象の転換を図る細かい工夫が数多く見られます。
そういったトップページの中でも、大きなスペースを割いている「人工衛星の”ミリョク”に迫る」というコンテンツが、このページのメインと言えるでしょう。
人工衛星の”ミリョク”に迫る
画面全体を使用するこのコンテンツは、暗い星空に浮かぶ大きな地球の周りを、多くの衛星が周回している様子を表しています。手動でのスライドに従って一つ一つの衛星にスポットが当たり、詳細な説明へと導いています。
このコンテンツだけで、私たちの日々の暮らしが、多くの人工衛星によって支えられていることが実感できます。また、大きな太陽電池パドルを持っていることは共通なのに、個性的な人工衛星の形の違いにも自然と興味が湧いてきます。
ロゴマーク
サテナビのロゴマークは、直線で描かれる「サテナビ」および英語表記文字に、太陽電池パドルとレーダーを持った人工衛星をアイコン化したイラストで構成されています。硬い印象の「機器」である人工衛星が、少し丸みを帯びた簡略化されたイラストで表現されることにより、愛らしさと親近感が生まれています。
GO TO TOPボタン
右下に現れるTOPに戻るボタンもまた、人工衛星のイラストで表現されています。
注目すべきはクリックした時のその動きです。一度バックするような動きを見せたかと思うと、急加速してページトップへ向かい消えていきます。
地上からは止まっているように見えても、またはゆっくり動いているように見えても、実は宇宙空間を猛スピードで移動している人工衛星らしさをうまく表現していると感心しました。
5 特徴
サテナビは、専門的な情報も多く扱っていますが、訪問者の理解に寄り添い、「科学」という分野へのハードルを下げる工夫が感じられます。
ビジュアルとコンテンツのトーンが、堅苦しさよりも温かさ・興味・信頼を高める方向にあり、科学技術に感じる硬さを程よく和らげている印象です。教育やストーリー系のコンテンツも、人間味を感じさせる構成となっています。
ひらがなの「はたらく」
サイト全体の記事構成からは、人工衛星は一部の専門家の為のものではなく、私たちの暮らしの為にあるということを強調している印象で、それはメインキャッチの「はたらく」というひらがな表記に象徴的に表れている気がしました。
そのひらがな表現には人間味を感じ、「動作している」ではなく、「機能している」でもなく、「宇宙と地球を、優しく見守る」イメージが浮かんできました。
多層的なコンテンツ構成
教育コンテンツ(サテライト・カフェ)、プロジェクト詳細、ストーリー、ニュースなど、多くのコンテンツを揃え、興味に応じてさらに深く掘り下げていける記事構成です。
教育と技術者への興味喚起
一般向けに宇宙の魅力を伝えつつ、研究者という仕事への興味を喚起する工夫が多く見られます。
データ利用という具体的なアクションへ導いていることも、実用的な人工衛星の魅力を伝える効果を生むと考えられます。
ビジュアルとストーリーによる感情喚起
衛星や地球の「今」を伝えることで、単なる事実以上に「共感」を引き出す設計です。
それぞれが持つ使命や熱い開発ストーリーの紹介によって、人工衛星たちを単なる「機械」とは思えなくなってきます。しっかりとしたビジュアルと丁寧な構成からは、自然と親近感が湧いてきます。
視覚重視の構成
地球の多彩な姿や衛星活動のビジュアルにより、視覚的に引き込まれる演出がされています。
専門機関による本格的な画像には、しっかりとした土台ある説得力が感じられます。
サイトの色彩
背景:ごく薄い水色やグレー。
メインカラー:青。明るさと落ち着きの両面を感じる青色です。
サブカラー:明るい水色。
色構成はシンプルで、落ち着いたトーンには公の機関らしさも感じられます。
6 万博コラボ特設サイト
2025年8月28日には、現在開催中の大阪万博とのコラボサイトが開設されました。
スプラッシュページは「白」の背景に、大阪万博のイメージカラーである「赤」と「青」の水玉がふわりと無重力空間で揺れるような印象的なものです。
このページのファーストビューは大きく映される青い地球と、「知り、理解し、予測し、行動する」という人工衛星に関わるミッションが表明されています。
イベント告知が主な役割の特設サイトですが、使用される画像の素晴らしさが目を惹きます。
ファーストビューの地球は、日本列島が中心に映し出され、黒い宇宙から私たちを見守る人工衛星の視線が自然と感じられます。
また、かぐやが撮影した「月から見た地球の出」や、初代はやぶさが最後に撮影した地球の画像などがさりげなく背景使用されており、宇宙ファンなら胸が熱くなるような仕掛けです。
まとめ
サテナビは、普段の生活では意識することのない、頭上高くを周回する人工衛星を、身近な存在と感じられるように紹介しているサイトです。
JAXAの運営ということで、サイトの色味などは「公」を感じる落ち着いたトーンですが、ビジュアル演出や表現は、誰もが親しみを感じるような寄り添いが感じられます。
専門機関が提供する本格的・専門的なビジュアルには説得力があり、この分野に距離を感じている訪問者の意識に働きかける効果を大いに感じます。
機能的なナビゲーションも、柔らかいタッチのイラストを添え、サイト全体の空気をやさしくする効果を生んでいます。
これらには専門的な記事を、専門外の人々に伝え広めるという意識を強く感じ、それは、将来の専門家・技術者を生み出す方向に働くことでしょう。
サテナビというWebサイトによって、私たちの日々の暮らしが多くの人工衛星に支えられていることが実感でき、遠く宇宙空間で見守る人工衛星たちに自然と親近感が湧いてくるサイト体験でした。