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058 山口大学

堅実さと「開かれた大学」の柔らかさ

山口大学公式ウェブサイト

「アマテラス石」発見特別企画:共同研究者所属 3大学の分析 Vol.3

アマテラス石:東京大学物性研究所の浜根大輔技術専門職員、山口大学大学院創成科学研究科の永嶌真理子若手先進教授、高輝度光科学研究センターの森祐紀研究員、京都大学大学院理学研究科の下林典正教授、リガク・ホールディングスのグループ会社である株式会社リガクの松本崇グループマネージャー、アマチュア鉱物研究家の大西政之氏と田邊満雄氏からなる研究チームは、日本の「国石」に選定されている「ヒスイ」の中から、新種の鉱物(新鉱物)を発見し、日本神話に登場する天照大神の名を冠し、「アマテラス石(学名:Amaterasuite)」と命名しました。


1 山口大学 Webサイトの概要

山口大学は、多彩な学部・大学院を擁する国立の総合大学です。多くの学部を有しその中でも、「共同獣医学部」「国際総合科学部」「ひと・まち未来共創学環」など、他の大学にはあまり見られない学部を持つのが特色です。

山口大学公式ウェブサイトは、受験生、在校生など、将来〜現在の学生(および保護者)に主として焦点を当てつつ、産学連携など研究機関としての情報提供も行っている印象です。

大学紹介には学長メッセージや理念・基本方針、広報、報告書などが整理されており、大学の特色を伝えています。
『過去と未来が出会い東西南北が交差する「知の広場」であり、驚き、個性、出会い、夢を“発見し・はぐくみ・かたちにする”スピリットを大切にする場所(教育理念)』である山口大学の姿を、国立大学らしい真面目さと、地域に寄り添う柔らかさで表現しているサイトです。

 

2 サイトのターゲット

国立大学らしく、多層的なユーザー層に向けての発信が見られます。

  • 受験生・在学生・卒業生 :「受験生の方」「在学生の方」「卒業生の方」といったセクション分けがあります。
  • 企業・研究者・地域・保護者・教職員 :こちらもそれぞれ対応するセクションへのナビゲーション構成が整備されています。
  • 海外からの利用者:日本語と英語で切り替え可能で、留学生や国際交流、共同研究の国際的な展開に対応しています。

 

3 トップページの印象

山口大学ウェブサイトのトップページは、「大学の学校案内」らしい雰囲気を持っています。

メインビジュアルは正門でしょうか。ロゴマークと「山口大学」の文字が表記される石門の様子からは、広く開かれた大学のイメージが感じられます。

ビジュアル上には、英語名「YAMAGUCHI UNIVERSITY」とキャッチ「発見し・はぐくみ・かたちにする 知の広場」が記されています。
ただ、この文字の位置については問題を感じます。画面サイズに依存するところはありますが、ほとんどのPCではちょうど文字表示が門のロゴや文字に被ってしまうでしょう。
文字の位置をというよりは、文字にかからない構図のビジュアルを選択した方がこのデザインが生きるように感じました。

また、モバイルでは門構えの部分は切れ、黄緑の葉が茂る木のみが表示されています。こちらはスクールカラーの黄緑のイメージに合っているので、「敢えて」の選択かもしれません。

メインビジュアルの下には、お知らせ等のコンテンツが続きます。スライド表示されるバナーリンクには、進学検討者向けの情報が多く、多彩な学部への興味を惹くことに注力している様子が伝わります。

「新着ニュース」や「イベント」は画像を中心とした視覚に訴えるもので、こちらにもスライド演出を加えるなど、カジュアルな「キャンパス」案内らしい雰囲気を持っています。

 

4 特徴

山口大学ウェブサイトは、全体的にシンプルな設計で情報提供の窓口としての機能を果たしています。

トップページに関しては、前に取り上げた東京大学や京都大学とは離れたカジュアルな印象を受けましたが、その他のデザインは国立大学らしい、整然と整理された情報を表示していく構造が主となっています。

統一感による信頼性の確立

カラーやフォーマットに統一感があり、サイトの信頼性を高めています。

色彩によるブランドイメージの構築

山口大学では、VI(Visual Identity)マニュアルを作成しています。

メインカラーは孔雀緑(DIC-N863 )=濃い青みの緑、サブカラーには豌豆緑(DIC-N836)=黄緑が制定されています。シンボルマークやロゴの使用に関して「デザインマニュアルに記載されている色番号を遵守」するよう指示があり、サイト設計にもその意図が反映されています。統一した色の使用により、安定したブランドイメージと信頼感の構築を重視しているのが伺えます。

親近感を演出する山口大学

整然としたサイトデザインの中でも、やはり「山口大学」らしいというべきか、カジュアルさを存分に発揮し、市民や年若い受験者にアピールするようなページが存在します。

1. 大学紹介:明日の山口大学ビジョン2030

「策定の背景」や使命など、語る言葉は大変真面目で崇高なものです。ただし、添えられるイラストはことごとく「カジュアル」で「親しみやすい」ものです。「ゆるい系」「脱力系」寄りと表現したいほど、ほのぼのとしたテイストです。大学のサークルが作成したようですが、公式サイトによるこれから先のビジョンを表すイラストとしての採用ですので、学生の感性を取り入れる柔軟さがよく表れています。

058 山口大学 明日の山口大学ビジョン2030イラスト

立派な理念ほど分かりにくくなってしまうもの。それをこのイラストは実に軽やかに、的確に表現しています。

2. 広報:ヤマミィオフィシャルサイト

ヤマミィは山口大学のマスコットキャラクターです。尖った耳を持つ猫で、両耳はそれぞれ山口大学のメインカラーの緑とサブカラーの黄緑色に彩られています。尻尾は葉っぱの形になっていますが、どうやら嬉しいと花が咲くのでしょうか、なんとも愛らしいキャラクターです。イベントには着ぐるみを呼ぶこともできるようで、「開かれた山口大学として社会との連携を強めること」に大きく貢献していると思われます。

058 山口大学 ヤマミィの紹介

調べてみると、大学がマスコットキャラクターを設定することは珍しくないようです。ざっと見た傾向では、東日本では学部や施設単位での設定が多く、西日本は学校としての制定が多い印象です。

3. 地域に開かれた大学

地域の方向けに、「社会人のための講座」が開設するなど、開かれた大学としての活動に力を入れている様子です。学部の活動報告に地域イベントへの参加が取り上げるなど、積極性がよく伝わります。

058 山口大学 活動報告

 

5 ユーザーインターフェース

山口大学ウェブサイトには、様々なユーザーに向けての細やかな配慮が見られます。

多層的なターゲットに対応したナビゲーション

トップページには主要カテゴリを網羅的に配置し、視覚的にも情報的にも「大学組織」「教育・学生生活」「研究・産学連携」「国際交流」「社会連携」「入試」といったグローバルナビゲーションにより、内容へアクセスしやすい構成となっています。さらに構造化されたサブメニューにより、多くの情報に効率的にアクセスできる環境を整えています。

明確なカテゴリ分けと導線設計

加えて、受験生向け情報、在学生サポート、卒業生へのつながり、研究者や保護者など、ユーザーの属性ごとに丁寧な導線を設けており、大学の多面的な魅力を的確に伝える工夫が見られます。

アクセシビリティ・使用環境への配慮

さらに、視認性高いフォントサイズの切替(小・中・大)や検索機能も備えられており、アクセシビリティへの配慮を強く感じます。
レスポンシブ対応もとられ、モバイル表示にも最適化されています。

SNS連携

Facebook、YouTube、LINE公式、XといったSNSアイコンがフッターにに配置され、外部チャネルとの接続が図られています。

多言語対応

日本語と英語の切り替えが容易であり、国際的視点を前面に出しています。英語版ページではビジョンの掲示や留学生向け情報を整備し、グローバル層への訴求も意識されています。

 


まとめ

山口大学の公式ウェブサイトは、多様な利用者層への配慮が行き届いた構造、一貫したブランドイメージの運用、視覚的にも整ったナビゲーションなどで、しっかりと信頼性を築いています。

整然としたサイトデザインで国立大学らしい真面目で堅実な顔を示しつつも、トップページやゆるキャラ、イラスト化されたビジョンの提示など、カジュアルな個性を見せているのが特徴的です。

研究に邁進するのみでなく、地域に開かれた親しみある大学であることもまた、国立大学として果たす役割なのかもしれません。

山口大学のサイトは、学術機関としての堅実な取り組みと、地域や若者に受け入れられる柔らかな姿勢を見事に融合して見せてくれました。

 

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