告知にとどまらない情報発信力
川越まつり
1. 川越まつり Webサイトの概要
川越まつり公式 Web サイトは、埼玉県川越市で毎年開催される伝統的な祭礼「川越まつり」(川越氷川祭の山車行事)を紹介・案内しています。
サイトトップには最新の祭情報(令和7年度の案内、山車曳き特別体験募集など)が掲載されており、さらに「概要/歴史」「山車紹介」「お囃子」「まつり会館」「ダウンロード」「アクセス」などのメニューで構成されています。
訪問者はまずトップページで祭りの醍醐味と全容に触れ、その後、歴史や解説、会場アクセスなどの詳細にスムーズに分岐できるよう設計されています。
全体的には、伝統を重んじながらも現代の来訪者(観光者・地元住民・祭関係者など)に使いやすい導線を備えた情報発信サイトとなっています。
2. サイトのターゲット
- 川越まつりを初めて知る国内外の観光客
- 過去に訪れたことのあるリピーターやファン
- 祭を構成する山車や囃子に関心を持つ文化愛好家
- 地元住民や地域関係者、祭運営に関わる人々
- 外国語版ページを閲覧する非日本語話者(英語、中国語、韓国語など)
これらのターゲットを想定して、サイトは日本語だけでなく英語・中国語・韓国語・仏語・独語・スペイン語など多言語対応のリンクを備えています。
3. ファーストビュー
川越まつりウェブサイトのトップページを訪れると、まずは提灯を灯した3台もの山車が出迎えてくれます。
川越まつりのクライマックス、『夜の「曳っかわせ(ひっかわせ)」』の場面で、山車にはそれぞれ舞い手とお囃子の演者が狭い空間にぎゅっと納まり、また、山車の前には手持ち提灯を掲げた参加者や、山車を操作する職人がひしめき合い、大変密度の濃い空間が生まれています。
このメインビジュアルからは、川越まつりの活気ある空気感が熱く伝わってきます。
4. サイトの特徴
川越まつり公式ウェブサイトは、ロングスクロールのトップページに、補足する詳細情報ページが加わる構造です。
トップページで基本情報が確認できるので、訪れる訪問者は初見でも迷いなく読み進められます。
深く掘り下げたい項目には別ページのリンクがある為、興味に応じた移動がタイミングよくできるようになっています。
サイトの色彩
背景色:白。
メインカラー:濃いグレー。
アクセントカラー:暗赤色(チョコレートブラウン)。
目立つのは黒・グレーと濃い赤色ですが、黄色からオレンジ、赤まで展開された色が見受けられます。色設計に基づいた色彩というよりは、伝統の重みと、にぎやかで熱い祭りの雰囲気を伝える色遣いといった印象です。
伝統と地域性
ウェブサイトでは、伝統や由緒に重点を置いて川越まつりを紹介している印象です。
慶安元年(1648年)に川越城主が氷川神社に祭礼を奨励したことに始まるという起源を持つ伝統行事であること、祭りの発展と現在の形式に至った経緯を詳細に伝えています。
歴史、伝統、由緒といったバックボーンが、まつりの価値を高めていくようなストーリー性を持っています。
また、地域住民の川越まつりに対する誇りをも感じます。

細部に踏み込んだ解説
公式サイトの「概要/歴史」では、神幸祭・山車行事など、川越まつりの重要な要素を丁寧に解説しています。
また、「山車紹介」では、川越の山車が 『江戸系川越型』 という選別された様式であること、構造や演出機構(例えば二層・迫りあげ式構造)についても解説があります。
こうした専門性のある説明は、単なる観光案内にとどまらず、文化資源としての祭の魅力を正しく伝える意図が感じられます。

まつり会館
「まつり会館」のコンテンツもまた、川越まつりをリアルな体験として掘り下げる要素です。
山車展示・歴史資料展示・囃子実演の案内があり、「川越まつりとは何か」というものを「いつでも体感できる」拠点であることが紹介されています。
今年の川越まつりに来訪する人も、予定が合わずに体験できない人にも、共に楽しめる施設であることが、スライドビジュアルや説明的な画像で、視覚的に伝わります。
本物の山車や3面スクリーンを使った展示からも、「川越まつりは地域の歴史・文化の中核である」と伝える強い意志を感じます。
多言語対応による国際性
サイト上部の言語切替リンクは、大変多くの言語を表示しています。
English・中文繁体・中文簡体・한국어 ・Français・Deutsch・Espanol・Portugues・ภาษาไทย
(英語・中国語・韓国語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ポルトガル語・タイ語)
「観光地川越」としての本気度を感じる部分で、在日・訪日外国人観光客を強く意識している設計です。
5. ユーザーインターフェース
川越まつりウェブサイトは、体験、知識、観光促進への意識を持って、ユーザーのサイト体験を深めることに努めている印象です。
明快なナビゲーション
サイト上部にグローバルナビゲーションが並んでおり、目的ページを直感的に選べる構成です。
トップページへの基本情報集約
トップページのスクロールによって概要がわかるので、初めて訪れたユーザーには迷いが生まれない親切な構成だと感じられました。
ここからの詳細ページへのリンクも直感的な導線で、ユーザーの行動動線を意識した設計です。
多言語対応
言語切替リンクがグローバルな位置に配置されており、日本語以外の閲覧者にとっても切り替えが容易です。
上記でも述べたように、非常に多くの言語に対応しているのが素晴らしいです。
情報の整理と区分け
お知らせ欄、協賛企業一覧、アクセス案内、ダウンロード資料など、性質が異なる情報が視覚的にも区分けされており、ページをスクロールしていったときに「ここはお知らせ」「ここはアクセス情報」と頭を切り替えやすい構成です。
モバイル対応
レスポンシブ対応されており、スマートフォンでの閲覧にも問題はありません。
ナビゲーションメニューはハンバーガーボタンによって展開されます。そこには言語切替リンクも国旗を使用する形で表示されているので、視覚的にも彩りが生まれています。
表示レスポンス
ページにアクセスする際、表示の遅さが気になりました。環境を変えて試してみましたが同様の傾向で、残念ながら「重いサイト」と言わざるを得ないでしょう。
2日間で70万人を超える来訪者が見込まれるイベントのサイトであることを考えると、問題を感じる部分です。
まとめ
川越まつり公式 ウェブサイトは、伝統文化としての川越まつりの魅力を正確に伝えるとともに、訪問者の使いやすさに配慮した設計意識が感じられます。
ファーストビューの迫力ある視覚演出、基本情報をトップページに集約して表示している点、多言語対応、直感的なナビゲーションと階層構造は、すべて訪問者への興味促進と利便性へ配慮した構成と言えるでしょう。
一方で、サイトの重さは、ユーザーへの負担となって満足度を低下させてしまいそうで、せっかく作り込まれたサイトであるのに残念に感じます。
地域からの発信で、川越まつりへの「誇り」や、さらに踏み込めば「自慢できる地域行事」のアピールが嫌味なく、興味深く伝えられており、解説の丁寧さや細やかさには好印象を抱きました。
単なる「今年のまつりの告知」にとどまらず、「川越まつりとは」「小江戸川越とは」を知ることが出来る、通年の観光客にとっても実用的なサイトであると言えるでしょう。
