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078 たいせつ古民家

豪雪に耐える「耐雪古民家」を「大切」に継承

たいせつ古民家

1. たいせつ古民家ウェブサイトの概要

「たいせつ古民家」は、新潟県上越後(かみえちご)の「耐雪(豪雪)×豪農」が象徴する歴史と気候風土の中で育まれた古民家建築を、「守り・再生し・承継する」ことを目標とするブランド・プロジェクトで、運営主体は「日本再生株式会社」です。
重要な建築遺産・伝統建築・古材・古民具などを活用しながら、居住・再生・見学・販売など複数の関わり方を提供しています。

たいせつ古民家のウェブサイトは、トップページにメニューで「たいせつ古民家とは」「承継樓」「古民家承継」「知技心」「古財屋 買う」「お知らせ」「お問い合わせ」等が並び、各セクションごとに「ブランドストーリー」「再生技法」「ギャラリー」「古財屋商品の販売」などのコンテンツが用意されています。

 

2. トップページの印象

たいせつ古民家ウェブサイトのファーストビューは、全面表示の古民家スライドビジュアルです。
太い梁小屋組の見える天井など、古民家の特徴が生かされながらも、窓は大きく明るい室内、木の香りがしそうな造作を持ちながらモダンな設備機器との組み合わせによって、現代的な住みやすさを感じる住居です。
特に、壁のない大空間のリビング・ダイニング・キッチンで家族が思い思いに過ごす姿、壁一面はガラス窓、先に広がる緑の田の風景を一枚に収めた画像は、米どころ「新潟上越後のプレミアム古民家」というキャッチを視覚化したようです。

古民家には、今の基準で言えば上質な材料を贅沢に使用している、さらに経年変化でより一層魅力が増す、というイメージがあります。今では手に入れ難いそれらを、このような形で生かす取り組みの素晴らしさが一見で感じられる、導入に相応しいビジュアルです。

ビジュアル上には、iF DESIGN AWARD GOLD、ウッドデザイン賞の受賞を示すバッチが表示されており、見かけ・機能・ブランド性が評価されたことがはっきりと示されています。

トップページの構成は、ファーストビューからスクロールで複数のセクションが順次現れる形です。

ブランドの紹介 → 「古民家承継 継ぐ」の呼びかけ→ 「知技心 知る」(知的好奇心を刺激するコンテンツ) → 古財屋の紹介 → お知らせ → フッター。

この流れは、ブランドストーリー → 活動(再生・承継・素材提供) → 信頼性 →( 購買・相談などの)アクション、というユーザーの意識の流れが、サイト内を旅するように紡がれていくようで、構成の巧みさを感じる部分です。

テキストは少なくビジュアルで世界観を演出しており、「目で見てわかる」、このブランドの「情緒性」「本物感」「時間の重み」を伝える最適な方法がとられているような印象です。

 

3. Webサイトの特徴

たいせつ古民家ウェブサイトは、「新潟」という地域に寄り添った古民家再生を、意識は強く、けれど表現は大変スマートに説明している印象です。

1. シンボル建築「承継樓(しょうけいろう)」

承継樓は、「世代を超えて、ウエルビーイングな古民家暮らしを承継するモデルハウス」で、iF Design Award GOLD、ウッドデザイン賞 奨励賞等を受賞しています。

新潟の「唯一無二の建築遺産」と位置付けて、「たいせつ古民家」の心を伝えるシンボルとも言える建築物です。

078 たいせつ古民家 モデルハウス

2. 「たいせつ」が意味すること

承継樓ページでは、プロジェクト名の「たいせつ」が示すものが、『「耐雪」と「大切」の2つの意味を込めています。』と説明されています。
私が密かに抱いていた疑問、「なぜ新潟という地に固執するようなブランディングなのか」に、ここではっきりとした答えがもたらされました。

「耐雪古民家」「豪雪×豪農」がテーマとして強く打ち出されていることで、「新潟の豊穣の歴史が産んだ」という説明にも納得がいきますし、新潟という地でこそ輝く古民家再生事業なのだと、改めて認識しました。

3. サステナビリティ・ウエルビーイング

「たいせつ古民家」では古材・建具・古民具などの「古財屋」の販売を行っており、モノとして歴史ある素材を扱っています(=サステナブル)。また、先端技術で生まれ変わった古民家は、住みやすさを取り戻しまた長く住み続けられます(ウエルビーイング)。

こういったサイクル活動によってC02削減を実現する理念には共感を生み、古民家暮らしに興味を持つ層も多いことでしょう。

078 たいせつ古民家 サステナブル

4. サイトの色彩

背景色:、またはごく薄いグレー
メインカラー:黒に近い焦茶。年を経て黒く艶を増した古民家の梁を思わせます。

シンプルな色構成で、余白を多く取り丁寧にデザインされているサイトです。

また、この色味の中では、フッターと共に全ページに現れる「お問い合わせ」ブロックに表示されている田園風景の緑色が一層輝いて見え、大変印象的です。

5. 「たいせつ古民家」のロゴマーク

「たいせつ古民家」のロゴマークは、左上だけ大きくRの付いた、長方形が3つ重なった形をしています。

このRの付いた四角形はサイト内の画像の切り取り枠に繰り返し使用され、大変象徴的な形です。

サイト内には特にロゴマークについて言及がなかったので、私なりに考察してみました。

  1. それぞれの四角は、人が住む住居部分、厳しい自然から暮らしを守る屋根、豪雪地帯・新潟に厚く降り積もる雪、の3つを表している。
  2. 人から人、親から子、過去から未来への「継承」を象徴している。

シンプルですが、こうしてブランド理念を汲み取ってみると、深い想いを感じるロゴマークです。

4. サイトのターゲット

  • 古民家を所有しているが活用・再生を検討している人
    たとえば実家・空き家・古い建屋などを持っていて、「どうしようか、どう保存再利用できるか」を模索している人。相談の受付窓口がアクション良く設置されています。また、再生事例も紹介されているので、心を動かすきっかけとなるでしょう。
  • 古民家を住む・暮らす目的で探している人(移住者やU・I・Jターン層など)
    「暮らしの質」「ウエルビーイング」「住み継ぐ」などの人に寄り添う語り口や、住環境(自然・光景・素材など)への言及が見られることから、都市から地方へ移住を考える層や、自然・伝統美を求めるライフスタイル志向の人へも響く構成でしょう。
  • 建築関係者/工務店・設計者・職人
    再生技法や造作・伝統工芸技術など、専門性の高いコンテンツがあり、「建築関係の方」という案内も見られます。
  • 自然・素材・伝統美に関心を持つ個人
    インテリアやデザイン志向の消費者、古材・古建具をインテリアに使いたい人など。

 

5. ユーザーインターフェース

たいせつ古民家ウェブサイトは、見やすさ、コンテンツ誘導性に優れたインターフェースで迎えてくれています。

1. ナビゲーション構造

トップメニューはシンプルにまとめられ、サブメニューがしっかりと整理されています。
「たいせつ古民家とは」「承継樓」「古民家承継 継ぐ」「知技心 知る」「古財屋 買う」など項目が整理されており、それぞれ導線が分かれているので、目的に沿った移動が可能です。
また、フッター部にもナビゲーション機能を設け、導線を複数設ける配慮を見せています。

2. スクロール誘導

上記のナビゲーションは固定化されておらず、また途中に「トップに戻るボタン」もないことから、基本的に「スクロールして読んでもらう」事に注力している印象です。
トップページは縦にスクロールしていく形式で、ユーザーが段階的にブランドストーリー → 機能・サービス → アクションまで到達できる設計です。
スクロールを進めるごとに「知りたいこと」が順序よく現れるので、どんどんと興味が深まっていく巧みな構成です。

3. コール・トゥ・アクション(CTA)

フッター前には常に「お問い合わせ」が配置されています。問い合わせへのハードルを下げ、興味からアクションへ繋げようという意識が強く現れています。
単なるボタンではなく、緑の田園風景のビジュアルであることに、好印象を抱きました。

4. 情報提示のバランス:

写真とテキストのバランスが良く、写真が多過ぎて文章が読みづらいということもなく、テキスト量も程よく抑えられています。
写真キャプションやタイトルで内容を示す工夫もあり、「伝えよう」という意識が感じられます。

5. レスポンシブ対応

スマートフォンでの表示にも対応しています。
スクロールを意識したサイト設計は、モバイル環境との相性もよく、アニメーション効果も良いリズムを産んでいます。

6. 多言語対応

こういった分野では、多言語化を期待していなかったのですが、しっかりと「English」ページが用意されています。
国際的な賞(iF Design Award)受賞作である「承継楼」の紹介です。

 


まとめ

たいせつ古民家のウェブサイトは、豪雪地帯で暮らしを守る「耐雪」構造の古民家を、建築遺産として「大切」に継承する理念を、読ませるサイトデザインで静かに伝えています。

「地域性」「伝統技術」「素材」「美意識」「サステナビリティ」「暮らしの質」をすべて統合したブランド世界観を、ストーリー性ある文章構造と、視覚から魅力を伝えるビジュアルによって、しっかりと訪問者の心に染み込ませていく構成が見事です。

サイト全体を通じて、単なる古民家再生業者、素材販売者、観光・体験施設という枠を超えて、「伝統・技術・暮らし・地域を統合するライフスタイルブランド」といった印象を受け、事業を超えた崇高ささえ、感じてきます。

豪雪地新潟から産まれ、新潟の地で歴史を刻み、豪雪地だからこそ真価を発揮する「耐雪」「古民家」を「大切」に守っていく活動は、純粋に賞賛の気持ちで応援したくなりました。

 

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