興味を引くロゴデザインの謎解き
インテリックス
1 インテリックスWebサイトの概要
株式会社インテリックスは、中古マンション再生流通、いわゆるリノベーションマンション事業を主軸に据えた総合企画会社です。仕入・設計・施工・販売・管理・保証までを一気通貫で手がける体制が特徴で、業界をけん引する存在です。
インテリックス公式ウェブサイトの「インテリックスについて」セクションには、「次の時代が求める価値を創造する」という企業の理念が掲げられ、企業情報や沿革、事業内容、IR、サステナビリティ、採用情報など、多角的なコンテンツが整理されています。トップページから全体像へ視線がすっと通る構造になっており、企業の顔として落ち着きと明快さを兼ね備えた印象です。
2 サイトのターゲット
- 顧客=中古マンション購入希望者・リノベーション希望者:事業紹介ページで、リノベーションやソリューションサービスの詳細がしっかり紹介されています。
- 投資家・株主:IR情報や株式概要、財務・業績資料など、丁寧に分けられたIRセクションが豊富に用意されています。
- ビジネスパートナー・採用志望者:採用情報や法人向けページなども用意され、ビジネスパートナーや就職を意識した読者に向けた発信も見られます。
3 トップページの印象
インテリックスウェブサイトのトップページは、「不動産会社」という認識で訪れると常識が覆るようなものです。
私には様々な象徴性や暗示性が秘められているように感じられて、この企業への興味がどんどんと増していきました。
リノベーション事業を象徴する一枚
ファーストビューで表示されるメインビジュアルは、例えば素敵な暮らしが想像できるようなおしゃれな部屋などではなく、壁紙や下地が剥がされてコンクリートの構造体が剥き出しの壁面、配線も垂れ下がっている状態といった、まさにリノベーション中の一室。
この会社の事業で最も特徴的な点「リノベーションマンション事業」を象徴する一枚です。
決して美しいとは言い難い光景ですが、ブルー系寄りの色調に調整され、ビジュアルとしては先鋭的なアートのような仕上がりにしているのが流石です。
会社の理念を象徴するロゴタイプ
注目すべきは画像だけではなく、その上に浮かび上がる「記号・文字」がより象徴的です。
「ー(マイナス)」「+(プラス)」「=(イコール)」「×(掛ける)」の計算記号が縦並びで浮かび上がり、それが横になったかと思うと、それぞれの記号の間にアルファベットが加わって、「Intellex」という社名ロゴを作り上げます。
このアイデアとデザイン性には、大変感銘を受けました。さらに、この記号には企業理念につながる意味が込められているので、本当に素晴らしい表現です。
つぎの価値を測る。
ロゴタイプに添えられるキャッチは「つぎの価値を測る。」
リノベーションにより価値を「高める」でも「造る」でもないところに、興味を引く仕掛けがあるように感じられました。
「測る」という言葉に掛かるように、左端には、目盛りが表示されていて、こちらも暗示を感じさせます。
4 サイトの特徴
インテリックスウェブサイトは、大変洗練されたデザインで統一されています。
派手さを避け、柔らかな信頼感を構築している印象です。
1 テキスト
フォント:Noto Sans。
読みやすいフォントを使用し、読みやすい大きさで表示し、読みやすい長さに抑えています。「読んでもらえる」こと、きちんと文字で説明をすることへの意識を強く感じます。
2 柔らかなビジュアル
ビジュアルに派手さはなく、柔らかく落ち着いたトーンに調整されています。
3 サイトの色彩
背景色:薄いグレー。全体的に落ち着いた印象を与えています。
メインカラー:マリンブルー。少し緑みを感じる落ち着いた青です。落ち着いた信頼性の中に、どこか清々しい若さも含まれている印象を残します。
サブカラー:茶鼠(MISSION)、落ち着いた黄色(VALUE)、小麦色(VISION)、シャドウブルー(SLOGAN)。理念体系4つを示すカラーで、落ち着いた「黄」「橙」「青」とそれを合わせたような「灰」の組み合わせです。
4 理念を表す「測る」
トップページで暗示された「測る」という言葉の意味が、理念で説明されています。
より良いリノベーションを実現するために「空間を徹底的に測る」という技術的なアプローチと、「お客様やマーケットが求める価値を測るという、二重の意味が「測る」という言葉に込められているようです。
社会や顧客に寄り添う事業姿勢を象徴して「測る」という言葉を採用しているのが、意外性もあり興味が湧くところでもあります。
5 リノベーションを表すシンボルマーク
ロゴやシンボルマークに取り入れられた記号は、「取り除く(−)」「加える(+)」「イコール(=)」「倍の価値(×)」という意味を持ち、「リノベーションの本質」を視覚的に表現する仕掛けとなっていました。

企業の基軸をシンボルマークに、さらにそれを企業のロゴにまで落とし込んでいる点が素晴らしいです。

「測る」についてもそうですが、トップページで訪問者に疑問を持たせ、理念として回答を提示するような仕掛けには、謎かけやトリックのような巧みさがあり、つくづく感心しました。
6 信頼感と品格の演出
経営データや沿革、理念を落ち着いた構成で提示することで、安心と信頼を感じさせるブランドイメージを醸成しています。
累計販売戸数や事業形態の多様性(リノベーション、アセットシェアリング、リースバックなど)を前面に出すことで、実績に裏打ちされた安心感と提案力を示しています。
施工会社向けにも、数字で示した現場数や、利点をしっかりとを明記しています。
ビジュアルや色調なども、上記で述べてきたように品のある(けれど親しみもある)方向に統一され、企業イメージを定着させています。
7 サステナビリティと社会性
ESG・サステナビリティに関するページも用意されており、「環境」「社会」「ガバナンス」といった側面での情報開示に取り組んでいる姿勢が伺えます。
8 ブランドストーリーの強調
30周年の節目を迎えた特設サイトでは、過去から未来への挑戦がロゴやスローガンと共に語られ、ブランドとしての歴史とこれからへの意志が表現されています。
30年の歩みや「先駆け企業」としての位置づけ、リノベーションにおける革新性を強調することで、業界内でのポジションと信頼性を確かなものにする意識が感じられます。
9 IR・投資家層、就職希望者への対応
詳細な投資家向け情報や株式情報、決算資料などを整理して掲載することで、投資家との信頼関係を強化し、企業価値を高めています。
また、採用情報に関しても、しっかりとした構造のページが用意され、就職に関しての不安感を取り除き後押ししています。
5 ユーザーインターフェース
インテリックスのウェブサイトは、構造上もユーザーに配慮されて設計されています。落ち着いた配色と整然としたレイアウトにより、視覚的にも情報の階層感がすんなり伝わってくる印象です。
画像の多用を避けつつ、企業理念や沿革を整理されたテキストとビジュアルで見せることで、上品さと信頼感を演出しています。
IRやサステナビリティ政策など、情報量が多い分野も、ページごとに入れ子構造で整理されており、情報過多にならず安心感があります。
メニュー
ナビゲーションメニューの大項目から細かなサブページへと自然に導かれる構造で、サイト内移動に迷う事なくスムーズな導線です。
また、ターゲットに合わせた導線もはっきりと示されています。
多言語対応
English(英語版)のページも用意され、日本語が母国語ではない層にもしっかりと対応しています。
SNS連携
Instagram、facebookへの導線が設けられています。
まとめ
インテリックスのウェブサイトは、企業としての信頼性、安定性、革新性を、柔らかい印象でありながら確実に伝える、落ち着いた雰囲気をまとっています。
読みやすさを意識したデザインと柔らかいトーンの統一で、顧客に寄り添う姿勢がサイトからもしっかりと感じられます。
コンテンツ構成が明確で、訪問者の目的に応じた導線が明確にナビゲーションされている点にも行き届いた配慮を感じます。
何より感銘を受けたのは、トップページで訪問者の注意を引き、理念ページで謎解きのように会社の姿勢を示して見せる仕掛けです。
事業へ取り組む姿勢がロゴビジュアルとなっていることも合わせて、ブランディングの確かさを繰り返し感じさせてくれたサイトでした。