手縫いにこだわる職人心が伝わるサイト設計
柳井畳店
1 柳井畳店webサイトの概要
柳井畳店は、東京都大田区池上で、三代にわたり「手縫い」にこだわる畳職人として、伝統技術を継承しつつ、品質と安心を追求する姿勢を示している老舗です。
柳井畳店のウェブサイトは、「店主挨拶」「理念」「こだわり」「職人紹介」「畳ができるまで」「畳の種類」「プレミアム畳表」「畳の材料」「会社概要」など、豊富なコンテンツに整理され、職人の心意気を伝えています。
2 サイトのターゲット
- 伝統的品質を重視する住宅オーナー:手作業と天然素材に価値を見出す方 。
- 高級志向の顧客層:「びんご畳表」など希少価値の高い素材へのこだわりの強さが伺えます。
- 歴史的建築や寺社建築関係者:神社仏閣など向け施工実績も掲載されています。
- 畳業界に興味を持つ就職希望者:求人情報が目立つ位置に掲載され、求人に積極的な様子が見えます。
3 トップページの印象
柳井畳店ウェブサイトのファーストビューでは、店主が黙々と手縫いで畳を仕上げていく様子が動画で表示されています。
迷いのない確かな手捌きは正に職人技で、私は何周回もじっと見入ってしまいました。
続いて現れるのは「正社員・アルバイト 全力採用中!」の派手なバナーです。トーンが抑えられたページの中では異質ではありますが、それだけに目立ち、このサイトの目的の一つが求人であることがはっきりと伝わります。
店主挨拶から理念、こだわり、商品紹介、職人紹介、お問い合わせまで、基本的な情報は全てトップページにまとめられています。
スクロールに従って、自然に柳井畳店の畳製作への想い=ストーリーに引き込まれていく構造です。
4 柳井畳店Webサイトの特徴
柳井畳店ウェブサイトで、私が何よりも注目したのは、企業規模に対してのウェブサイト構成の巧みさです。
しっかり見せる・読ませるウェブサイト
長い歴史を持つ「有限会社 柳井畳店」ですが、現在職人として紹介されているのは店主を含めて2人で、町に普通にある畳店と変わらず、「企業」としては非常に小規模と言えるでしょう。
ですが、サイトは余白を多く取った「読ませる」ページ構成と、モーダルウィンドウも使用した商品を見せる演出やトップページでの動画のビジュアル演出には、堂々とした風格が漂っています。
ブランドメッセージの一貫性
「手仕事」「天然素材」「丁寧に作って、丁寧に売る」といった理念が、画像と文章を通じて一貫して伝わります。
プレミアム素材の希少性を強調
例えば「びんご畳表」は総理大臣賞受賞の希少素材で、迎賓館と同等の品質をアピールするコピーが印象的です。
施工例で見せる魅力と信頼性
例えば、「モダン乱敷き畳」では色やレイアウトの自由性を訴求し、個性的な和空間の提案として魅力的に見えます。
また、茶室や神社仏閣の施工例からは、仕上がりの状態を見せる面とともに、実績としての信頼性を見せています。
求人
トップページのバナーにより、サイトの目的が求人であることがはっきりと示されていますが、ナビゲーションにも「求人」の項目が設けられており、さらにトップにも「求人情報」のボタンが目立つ配色で設置されています。
サイトの色彩
背景色:白、地紋の入ったごく薄い藍色。
メインカラー:藍色。
サブカラー:薄い藍色。
アクセントカラー:山吹色、金色。
藍色主体の全体的に落ち着いた色彩で、伝統ある老舗の雰囲気が高められています。
5 柳井畳店にみるマーケティング
柳井畳店のウェブサイトからは、伝統を守る店舗のマーケティング施作の巧みさが目を引きます。
信頼の構築
「三代続く」「手縫い」「伝統と革新」の物語が、信頼と安心感を醸し出しています。
差別化の明確さ
手縫い・天然素材・希少素材といった要素で、市場に多数ある機械製造の畳屋との差別化を図り、「特別感」「上質感」を演出しています。
コンテンツによる引き込み
職人紹介や「畳ができるまで」の工程など、ストーリーテリングを通じて訪問者を引き込む構成です。
求人・お問い合わせ促進
電話番号や営業時間、「ホームページを見た」と伝えるよう促す文言が各ページに統一されており、問い合わせへの導線も明確です。
求人に関しては、トップページでのアピールを筆頭に、ナビゲーション、ボタンでの導線が設けられ、検討者の気持ちの後押しをしています。
6 ユーザーインターフェース
柳井畳店ウェブサイトは、シンプルな設計でカテゴリが明確な為、ユーザーが求める情報へスムーズに誘導される構成です。
画像も多用され、手仕事の質感や商品の温かみを丁寧に伝えています。
ナビゲーション
グローバルナビには豊富なカテゴリが整然と並び、視覚的にも分かりやすいレイアウトです。
フッターにもナビゲーションが細かく表示され、直接的な導線も設けられています。
レスポンシブ対応
スマートフォンでの閲覧にも対応しています。
ハンバーガーメニューは藍色のドロワーで、メニュー項目の間にきっちりと並んだ白いボーダー線には、私はどこか畳の目の印象を感じました。
SNS連携
サイト内にfacebookアイコンがあり、明確な導線があります。
まとめ
柳井畳店のウェブサイトは、小規模店舗ながら、確固たる理念に基づき、しっかりとマーケティングを意識したサイト設計が大変印象的です。
伝統と高品質を丁寧に伝えることで、競合他社との差別化を図り、施工例や取引先の開示により、顧客に安心感と信頼性を与えています。
落ち着いたデザインの中にも、現代の生活に合わせた提案も盛り込み、さりげない演出効果も加わって、サイトにはスマートな印象を持ちました。
この店が、自らの理念とこだわりをしっかりと把握して、その強みと、この時代の変化に対応する姿勢をもサイトを通じて示しているところが、大変素晴らしく感じます。
積極的な求人を行なっていますが、しっかりとした理念とそれを示すサイトを持つこの店舗ですから、この先への展望にも明るさが見えます。
和の心とも言える畳文化を、こういった姿勢で守る柳井畳店の存在は頼もしく、ウェブ上で確認できたことは私にとって大きな収穫でした。