数々の業績を産んだ「自由の学風」と伝わりやすさへの意識
京都大学公式ウェブサイト
「アマテラス石」発見特別企画:共同研究者所属 3大学の分析 Vol.2
アマテラス石:下林典正 京都大学理学研究科教授、浜根大輔 東京大学技術専門職員、永嶌真理子 山口大学若手先進教授、森祐紀 高輝度光科学研究センター研究員、松本崇 株式会社リガクグループマネージャー、アマチュア鉱物研究家の大西政之氏と田邊満雄氏からなる研究チームは、日本の「国石」に選定されている「ヒスイ」の中から、新種の鉱物(新鉱物)を発見し、日本神話に登場する天照大神の名を冠し、「アマテラス石(学名:Amaterasuite)」と命名しました。
1 京都大学Webサイトの概要
京都大学は、京都市に本部を置く国立の総合研究大学で、1897年創立の長い歴史を誇っています。「自由の学風」や自主自律、学問の探究心といった方針を示し、19名のノーベル賞受賞者を輩出するなど、国際的に認められる多くの研究業績を誇っています。
京都大学公式ウェブサイトは、学部・大学院案内、研究成果、入試・キャンパス情報などを包括的に提供する案内サイトとして、豊富な情報を提供しています。視覚的にも、情報の整然としたまとまりと深みを感じさせる構成です。
2 サイトのターゲット
- 受験生・在学生:進学・学びに関する具体情報へアクセスしやすい構成です。
- 研究者・産業界:産官学連携や研究情報が充実しています。
- 地域住民・社会人:公開講座やイベント案内を通じ、社会連携が示されています。
- 国際的な来訪者:多言語対応により、グローバルに情報発信しています。
3 トップページの印象
京都大学ウェブサイトトップページは、メインビジュアルとして、キャンパスの雰囲気や学術成果などがスライド表示されます。明るく活動的な学生生活と、知的なインフォメーションが同居し、「自由の学風」の中で、数々の素晴らしい業績が生まれた事を現しているかのようです。
「自由」と言っても、無秩序な気配はなく、全体としては整然としており、落ち着いた印象です。
4 特徴
京都大学ウェブサイトは、基本的には実務的で分かりやすく整理された構造です。情報をシンプルに伝える事に注力している事が伺え、凝った演出等は見られません。
- グローバルナビゲーションの明確さ:多層的なカテゴリで構造化され、目的に応じた入り口が非常に整理されています。
- 多言語対応の充実:日本語に加え、英語・中国語・韓国語版への切り替えが可能です。
その中でも、「伝わりやすさ」に配慮する工夫が随所に見られます。研究成果の報告ページなどでは、ビジュアル中心のブロック形式で情報が表示され、一目で内容の概要が把握できます。
さらに、その詳細な内容も、文章面で「伝わりやすさ」を意識している印象を受けました。
例えば、2025年08月22日発表の『「骨」まで剥き出しになった超新星―宇宙で稀に見る爆発、元素工場の直接的証拠―』では、企業・研究者の方が対象となっていますが、難解な言葉を出来るだけ避けるような語り口です。内容は専門的で素人が完全に理解するのは困難ではありますが、「何となく理解できそう」と思えるような寄り添いを感じました。
学部案内の自由な表現
シンプルに実務的なサイトの中でも、学部案内に関しては受験予定の学生を主な対象とし、集客的な意識の高いデザインとなっているのが印象的です。
カテゴリトップこそ学部名等が並ぶシンプルなものですが、ワンクリック学部サイトに進むと、凝ったサイトデザインです。各学部ごとに特色を出しており、「自由」な校風がよく現れている部分だと感じました。
例えば文学部のサイトトップでは、薄青の背景に、様々な図形が次々とアニメーション表示されていきます。写真画像表現ではなく、文字を連ねるのでもなく、敢えて図形に意味を持たせるように表現するところにセンスを感じます。
サイトの色彩
京都大学はビジュアル・アイデンティティを公開しており、京都大学らしさの表現へのこだわりが強く感じられます。国際化を見据えての対応とのこと、さすが世界に認められる研究を行う大学です。
スクールカラー「濃青(PANTONE281C)」には信頼感・知性・伝統を感じます。サイトはこの濃青を効果的に使用し、背景色には薄い青への展開で、サイト全体に落ち着きと統一感を与えています。
また、アクセントカラーとしては、金色が見られます。こちらは誇りと京都らしさを感じる色です。
京都大学のエンブレム
一般的にはロゴマークと言ってしまいますが、京都大学は「エンブレム」として2018年に「百周年時計台記念館前のクスノキをモチーフに」したものを制定しています。
大きく広がるクスノキの枝は、京都大学の歴史と、学問の層の厚さを示しているかのようです。
またエンブレムに記された「FOUNDED 1897」の文字にも、その歴史への矜持が感じられます。
5 ユーザーインターフェース
京都大学ウェブサイトは、グローバルナビゲーションにより、多層的なカテゴリで構造化されている為、多様な目的のユーザーに対応した入り口が非常に整理されています。
ナビゲーション設計
ナビゲーションは明快で構造的、視覚的にも煩雑さがなく情報へスムーズに誘導する設計です。
多言語対応
日本語以外に英語・中国語・韓国語に対応しており、国際的な大学のサイトとしての機能を果たしています。
SNS連携
「ソーシャルメディアアカウント一覧」ページが用意され、公式ソーシャルアカウントへのアクセスがずらりと明記されています。前回分析した東京大学にも同様のページが設けられており、昨今の大学組織としては(国立大学であっても)一般的な傾向なのでしょうか。特徴的なのはその種類の多様さで、YouTubeやTikTokアイコンが多く見られ、動画での情報発信に注力している様子が伺えます。
レスポンシブ対応
多機種での使用を見据えてしっかりとした対応が取られており、モバイル表示も快適です。
まとめ
京都大学の公式ウェブサイトは、多くの情報発信をする学術機関として、シンプルで明快なサイトを構築しています。その中にも、京都大学らしさ=「自由の学風」と数々の業績を誇る歴史に支えられた「伝統」を、「多様なデザインの学部サイト」や、「色彩(スクールカラー)」によって表現しています。
一部にはコンテンツが見やすくブロック配置されたページもあり、また、伝わる表現を意識した語り口など、受験生から研究者・社会層・国際層まで幅広く配慮している様子が伺えます。
明確なビジュアルアイデンティティ、構造化されたグローバルナビゲーション、多言語対応やSNS連携等により、信頼・共有・拡散という三方向のブランド価値がしっかりと支えられています。
統一された色彩は視覚的にも心地よく、柔らかな親近感と知性を併せ持ち、大学の信頼を高める効果のあるサイトだと感じました。