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044 山田兄弟製紙

伝統を受け継ぎ環境にやさしく、環境意識をブランディングへ生かす


山田兄弟製紙webサイトの概要

山田兄弟製紙(やまだけいていせいし)株式会社は、140年以上もの歴史を持つ越前和紙の老舗製紙メーカーで、透かし・漉き合わせなどの高度な加工技術を活かした、品質高い製品を作り出しています。また、琵琶湖の水質保全に寄与する「ヨシ」を原料に用いたヨシ紙や、古紙を活用した雲華紙など、環境負荷の低減にも力を注いでいます。

山田兄弟製紙のウェブサイトは、「伝統」と「環境技術」を並列に扱っており、環境への思いやりを持つ企業姿勢が自然と伝わってくるような、温かみを持っています。

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1 山田兄弟製紙のターゲット

山田兄弟製紙のウェブサイトは、個人・法人、双方に向けたつくりを感じます。

共通するのは、伝統ある和紙文化に興味がある方や、環境配慮を大切にする方といったところでしょうか。

  • 企業・クリエイター向け:透かし入り和紙や漉き合わせなど、名刺・表彰状・パッケージといった用途を想定する発注者。
  • 個人向け:地域や文化に関心のある層。和紙雑貨ブランド(久兵衛)やワークショップ・工場見学に興味を持つ層。

 

2 トップページの印象

1 藍色の暖簾に迎え入れられるようなスプラッシュページ

山田兄弟製紙サイトは、藍色のスプラッシュページから始まります。透明度があるので後ろにトップページがうっすらと透けて見えています。和のイメージで表現するなら、「暖簾の奥の店の様子が微かに伺える」ような感じといえば良いでしょうか。

程なく中央にロゴマークがフッと現れ、サッと藍色の地と共に中央に吸い込まれるように小さく消えていきます。

ハッと注意を惹きつけて、スッと意識をサイト内に引き入れる、そんな導入部分です。

2 スライドビジュアル

トップページの上部に現れるのは画面いっぱいの幅をとったスライドビジュアルです。映されるのは、「機械に巻き取られていく長い藍色の和紙」「一枚一枚丁寧に人の目で製品を確認する姿」「紙の原料づくり」の3枚。全て山田兄弟製紙の製紙に対する丁寧さを現しています。

3 「和紙」と「環境」双方への想い

続くコンテンツも大きく画像を使用し、和紙作りと、そして環境への想いを綴っています。

コンテンツの中にはYoutubeの埋め込みもあり、環境に配慮した伝統的な和紙作りが真剣に語られています。

 

3 特徴

山田兄弟製紙ウェブサイトからは、越前和紙の伝統と環境への思いがそっと伝わってくるような、落ち着いた温かさを感じます。140年以上という歴史は重みのあるものですが、時代と共に変化しつづけるといった姿勢が、「環境を守る」企業といった方向性で強調されています。

長い歴史のある企業サイトですが、堅苦しいような雰囲気は感じません。かといって軽々しい印象もなく、やわらかな空気の中に、伝統を途切れさせてはいけないという責任への緊張感が静かに漂っている気がします。

1 ブランディング

「140年の伝統」「環境にやさしい」の両面をやさしく語る構成は、ブランドの信頼感と現代的な意識を同時に築いています。

1 環境をキーワードに

各ページには、製紙と同じ位の質量で環境への想いが綴られています。

  • 「環境にやさしい紙づくり 伝統の技術から環境技術へ」
  • 「伝統を受け継ぎ環境にやさしく」
  • 「環境にやさしいヨシ紙」

歴史ある伝統和紙を守りながら、「環境を守る」ということをキーワードに、この時代に必要とされる社会的責任を担う企業へと昇華させています。

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2 山田兄弟製紙のCRS活動とSDGsへの貢献

ヨシを使った環境にやさしい紙づくりへの取り組みや、古紙を使った製品、そのままでは廃棄されてしまう「久兵衛」をオンラインショップで販売するなど取り組みは様々ですが、あくまでも事業に沿った、企業として無理をしない方向での「CSR活動」が、「環境企業」というブランディングともなっているのが素晴らしいです。

SDGsという言葉がなかった時代から、環境に良いヨシ紙での製紙に目をつけた先見の明にも感嘆を覚えます。

3 ブランドイメージの発信

山田兄弟製紙は、その長い歴史に驕ることなく、積極的に時代の空気を取り込み、広報発信も怠らない姿勢が見えます。冒頭のYoutubeもそうですが、Instagramやfacebookでの発信に加え、地域イベントへの参加や工場見学の実施、更にはオンラインショップで端紙を販売するといった行為さえも「環境企業」としてのアピールになっている気がします。

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2 山田兄弟製紙のロゴマーク

ロゴマークは、長さの異なる長方形が一つの菱形を形作っているものです。デザイン意図について書かれたものは見つからなかったのですが、私は次のようなイメージを抱きました。

  • その一つ一つの長方形が梳きあがった和紙を意味している
  • 長方形が集まったスリットのある四角形は、紙漉きの道具「手漉用簀桁」の形

山田兄弟製紙では、今は機械で紙を漉いているようですが、女神様に教えを受けたという手漉きの技術への想いは、今もなお大切にしているのではないでしょうか。

3 色彩と紙の質感

山田兄弟製紙のサイトは、白を背景にすることで、精彩なビジュアルが映える効果を生み出しています。

コーポレートカラーの藍色をヘッダーに、フッターには黒を使用していますが、強さを感じる色はこれらのみで、他はクリーム色や水色、ベージュなど淡い色を使用しています。

ヘッダーフッターと画像で引き締め、あとは優しい温かみを感じさせる、そんな色彩設計だと感じました。

また、製紙会社らしい装飾も施されています。「雲華紙」ページは花色の雲華紙が、「透かし・漉き合わせ」ページでは色とりどりカラフルな和紙が見出し背景画像として使用されています。さらに、ナビゲーションメニューのホバードロップダウンにも和紙テクスチャがさりげなく使用されているのがおしゃれです。

4 フォント

本文などはGoogleフォントのNoto Serifが使用されています。さすが、能登地域 福井県越前市の老舗企業のこだわりでしょうか。

細めの明朝体で、ゴシックに比べると視認性は劣る面がありますが、やはり、和紙には明朝体がよく似合います。背景を白や淡い色にしており、文字間や行間に余裕を持たせる読みやすさへの配慮があります。

ただ欲を言えば、もう少し文字色を濃くし、画像に乗せるときは背景色に透明度を入れない方が良かったのでは、と感じました。

 

4 ユーザーへの配慮

山田兄弟製紙ウェブサイトのユーザーインターフェイスは、カテゴリごとに整理されたグローバルナビゲーションと、雲華紙イメージを使用したホバードロップダウン特徴的です。カテゴリ数は少なくわかりやすく、スムーズな導線です。

文字の視認性には若干問題を感じましたが、サイトの世界観には合っているので、デザインとの兼ね合いで難しいところです。

見出しやメニューカテゴリなど、各所に英語が添えられていますが、特に多言語対応は取られていないようです。品質が確かで環境に配慮した会社というブランド希求力もある企業ですから、この先海外との取引も見据えての対応がとられることを期待したいです。

YoutubeやSNS等を通じての情報発信に加え、イベントへの参加や企画、また見学の対応など、ユーザーへの体験機会の提供に積極的なのも特徴です。

 


山田兄弟製紙webサイトのまとめ

今もなお 紙の神様の教えが息づく、越前和紙の里 五箇の村(参照)

女神が紙の漉き方を教えたという伝説を持つ地で、140年以上もその教えを敬いつつも、更に時代と共に変化しつづける ー 山田兄弟製紙株式会社のサイトからは、そんな意識と覚悟が感じられます。

SDGsの取り組みが企業として必須な昨今ですが、時代に先駆けて環境に配慮した製品製造へと舵を切った先駆性、それを企業価値を高める方向に進めた実行力、「環境配慮企業」へと意識づけるこのサイト設計、全てが調和して見事なブランディング戦略となっています。

SNS、Youtube、イベントへ、見学会など、守りだけではなく自ら歩み寄る積極性にも、時代とともに変わってこそ伝統が守れるという意識の高さを感じます。

落ち着いた佇まいのサイトながら、内に秘めた想いは真剣で、時代に合わせ時代と共に変わりながらも、その本質は神様に教えられた技術を守って生きて行くという覚悟さえも感じました。

これから先、何年何十年、何百年と、時代に合わせて変わりながらも伝統と環境を守るという姿勢と共に、山田兄弟製紙が質の良い素敵な和紙を提供してくれることを期待したい、そんな想いを抱かせる、静かに熱いサイトでした。

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