優しく寄り添う設計で伝える、糸魚川の魅力
糸魚川ジオパーク
1. 糸魚川ジオパークwebサイトの概要
糸魚川はフォッサマグナの西端に位置していることで、日本海から北アルプスまで多様な地形や岩石が連なり、ヒスイをはじめとする貴重な地質資源や、火山活動・隆起が生んだ雄大な景観が魅力的な地域です。
糸魚川ジオパークは、世界に先駆けて、糸魚川市内の地質見学地の呼称を「ジオパーク」と命名し、その後日本初の「世界ジオパーク」の一つとして、ユネスコ世界ジオパークに認定されています。
その活動は1987(昭和62)年にまで遡り、約24エリアに分かれるジオサイトの自然や歴史・文化と結びつき、地域の宝物とも言える自然遺産を活用しながら保護や教育活動を展開しています。
フォッサマグナミュージアムのオープンやガイドツアー、見学旅行の実施など、糸魚川の大地の魅力を伝えるその活動は、意欲と積極性を強く感じるものです。
糸魚川ジオパークの公式ウェブサイトは、活動の詳細や、地質遺産としてのジオパークの魅力を地元発信で伝えています。
また、糸魚川の地質・文化・観光情報をまとめた観光ガイドを兼ねて、モデルコースや温泉などが多く掲載されており、広くこの地域全体の振興を一体化して進めている様子が伺えます。
2. ターゲット
糸魚川ジオパークウェブサイトの主なターゲットは、自然や地質、歴史に興味のある観光客や教育関係者でしょう。
さらにはこの地域を訪れる観光客、子どもから年配までのご家族連れを中心に少人数のグループが考えられます。レンタカーの案内など、訪問者の利便性を意識した案内で対応が見られます。
また、糸魚川市観光協会としてもガイドツアーに対応していますので、少団体の旅行主催者も視野に入れていると考えられます。
観光情報やアクセス情報が丁寧で、初めて訪れる方への配慮が強く感じられます。
3. トップページの印象
糸魚川ジオパークウェブサイトページ冒頭は、地域の特徴を表すビジュアル画像がフェード切り替えのスライダー表示されています。
映されるのは、地域の祭りや植物、この地ならではの景観が楽しめる日本初の海上インターチェンジなどです。
- 夕日を浴びる「陵王の舞」能生白山神社春季大祭
- 須沢水芭蕉群生地
- けんか祭り(天津神社春季大祭)
- 朝日岳のチングルマ
- 親不知の海上インターチェンジ
「ジオパーク」と言う言葉から私が想像するものとは少し離れているものではありましたが、地域性がよく出ています。ここには、ただ単に地質や鉱物を紹介するだけではなく、地域一帯含めて守るべき大切なものだという姿勢がよく現れていると感じました。
画像には英文「Itoigawa UNESCO Global Geopark」が大きなフォントサイズで力強く表示されています。そこには、世界に認められた素晴らしい自然や文化を抱える地域だ、という誇りが含まれているような印象を受けました。
スライドビジュアルは、よく見られるような全面表示ではなく、左側を使ってロゴマークやナビゲーションメニューが表示されています。常に固定表示されているので、スクロール中にも目的のページへ移動が可能で利便性に配慮した設計です。
4. 糸魚川ジオパークWebサイトの特徴
糸魚川ジオパークウェブサイトは、ジオパークについて、糸魚川について、観光情報、イベント情報など膨大な情報を、整理分類して誰でも迷うことなく閲覧できるように配慮されています。
幅広い年代の利用者が想定されますので、視認性にも優れたデザインとなっており、利用者の利便に寄り添った親切さを感じます。
︎1 グローバルナビゲーションメニュー
メニューは大きく6項目に分かれ、その下に細かく分類された項目が入れ子状に並んでいます。情報量の割に階層構造が深くない印象です。また、グローバルナビゲーションにカーソルを合わせると、その下の項目がホバー表示されるため、ワンクリックで目的のページに移動できるような親切設計です。
︎2 カラー設計
背景は白と淡いグレーでゾーン分け使用しています。余白を多く取ったデザインなので、サイト全体が明るい印象に保たれています。
テーマカラーは青みを帯びた緑。この色は、糸魚川の象徴とも言える「ヒスイ」をイメージしているのでしょう。ナビゲーションメニューやフッター、見出しなどに使用されており、サイトの中の多様な情報をこの色で整理・統一しています。
︎3 文字情報
フォントは、基本的に「マメロン」というフリーフォントを使用しているようです。開発者曰く「丸形書体」とのこと。手書き丸文字の要素も取り入れたような印象で、少しクセがありますが可読性は良く、親しみがあり遊び心も感じるフォントです。
白を背景にくっきりと墨色で表示される文字の視認性が高く、またフォントサイズも大きめで文字幅も少し広く取っており、文章が読みやすいものとなっています。
サイトの文章の語り口も、フォントに合った親しみあるものです。難しい言葉をできるだけ避け、語りかけるような、さらには一緒に遊ぼうと誘うような。子供の閲覧も考えての言葉選びをしているのでしょう、高学年向けの図鑑本のような雰囲気さえあります。
4 ロゴマーク
糸魚川ジオパークウェブサイトのロゴマークは、丸と三角の目を持った人、というよりはロボットのような、とても印象的なものです。サイト内には、このような説明がありました。
「中央のジクザク線は、糸魚川-静岡構造線を表しています。三角と丸は、断層の両側で地質が異なることを表し、二方向の矢印は、糸魚川ジオパークから情報を発信することを意味しています。」(参照)
ロゴマーク全体が、「糸魚川ジオパーク」のたくさんの特徴を詰め込んで表現されているのが素晴らしいです。
ファーストビューの画面では白抜きで表示されていますが、デザインとしては、「ヒスイ色」の青みがかった緑となっています。
下部に添えられる「Itoigawa Geopark」 の文字も、ゴツゴツした岩や、川の流れでツルンと丸く磨かれた鉱物を想像させるタイポグラフィとなっており、擬人化したような上記のマークと一体化して、デザインが作る「糸魚川ジオパークストーリー」を形作っています。
︎5 情報の見せ方
情報は基本的に画像と短い文を組み合わせたブロック構成です。そこからさらに「詳しい情報」ページへのリンクが設けられ、興味に応じて深く掘り下げて調べることができる構造となっています。
きっちりと整理され、一ページの情報量も絞られているので、疲れることなく次へ次へと読み進めることができます。
︎6 観光情報と楽しみ方
観光情報と楽しみ方ページには、味覚(特産品)や温泉、観光地や四季の自然などを、それぞれ項目に分けて詳しく紹介しています。
タイムテーブル付きのモデルコースもあり、観光情報サイトとしても十分な情報量です。
フォッサマグナミュージアムやジオパルのような、他の観光施設への導線も観光誘致において強みになるでしょう。
つくづく、地元のことを考えて共に進もうという意識に溢れたサイトだと感じます。
また、この地の魅力の多様さと規模には驚くばかりです。
5. ユーザーインターフェース
糸魚川ジオパークウェブサイトは、ユーザーの使いやすさを第一に設計されているような印象です。
ナビゲーションは左にスペースを大きく取って、いつでも使いやすい固定配置です。主要テーマ名を表示したセクション分けで、下の階層へもホバー効果でワンクリック移動できます。
文字表示の視認性高さへも配慮しているのが伺え、どのような人にも情報が伝わるように細部まで心を配っているのが感じられます。
レスポンシブ対応もしっかりととられ、スマートフォンでもスムーズに閲覧できます。
多言語対応についても、英語・韓国語・中国語のページが作られています。その情報量も日本語版に匹敵するほど充実しており、さすが、「世界ジオパーク」だと納得できるものです。
外部媒体への連携も抜かりなく、Facebook、Instagram、X、YouTubeへのリンクアイコンが、グローバルナビゲーションと共に常時表示されています。更新頻度は媒体によって様々なようですが、多方向からのアピールに取り組む姿勢が出ています。
まとめ
糸魚川ジオパークウェブサイトは、子供でもわかりやすく、誰もが使いやすい、ユーザーに寄り添ったサイト設計です。やわらかく丁寧で、噛み砕いてわかりやすく、情報がきちんと伝わるように届けようという意識での構成が感じられます。
伝えられる情報は、地質や鉱物といった自然財産の案内を超えて、観光分野にも同量の熱意が注がれています。
ジオパークの展示施設としてのフォッサマグナミュージアムや、ジオパルへの連携もあり、建物があるなしにかかわらず、学術的価値と観光的魅力が兼ね備わった地域全体=糸魚川ジオパーク、という姿を現しているような気がします。
「世界ジオパーク」の一つという確かなガイドラインを核に、糸魚川を一つのブランドとして包括的にアピールしている「ジオパーク戦略プロジェクト」。
それは子供にも高齢者にも配慮した、親切で優しさが感じられるサイトとして、目に見える形で私たちに糸魚川の姿を伝えてくれます。